妊娠・出産時期
2023/05/11
妊娠が判明し、ママの体も徐々に変化していく妊娠初期。人によっては、体にさまざまな自覚症状を感じるケースもあるでしょう。妊娠の可能性がある最もわかりやすい症状としては、「生理が始まらない」ということが挙げられます。それ以外には、いつ頃からどのような症状が現れるのでしょうか。
ここでは、妊娠初期に現れることがある症状と、「妊娠かも?」と思ったときや、妊娠初期に気をつけたいポイントなどについて解説します。
目次
妊娠前の最終生理の初日から、妊娠13週6日までの時期を、妊娠初期といいます。この期間のあいだに、生理予定日に生理が始まらなかったり、つわりの症状が現れたりして、妊娠に気づく方もいるでしょう。
一方、妊娠初期は、一定の確率で不正出血や初期の流産などが起こりうる時期でもあります。妊娠が成立して間もない14週くらいまでの時期は、特に何もしなくても初期の異常が起こりやすいということは、認識しておく必要があります。
妊娠週数は、定義上、妊娠前の最終生理初日を0週0日として数えます。数え方が少しわかりづらいので、あらためて確認しておきましょう。
・妊娠0週0日:(妊娠前)最終生理初日
妊娠週数のカウントの起点は、妊娠前の最終月経初日です。この日が妊娠0週0日となり、「妊娠1ヵ月」の期間が始まります。
・妊娠2週頃:排卵・受精
妊娠2週頃、最終生理から2週間前後で排卵が起きます。この時期に性交して受精すると、受精卵は約1週間かけて子宮内膜に向けて移動します。
・妊娠3週頃:着床
妊娠3週頃、受精卵が子宮内膜に着床します。
・妊娠4週頃:次の生理予定日
妊娠4週頃では、妊娠していれば次の生理は始まりません。生理予定日を過ぎても生理が始まらないことから、「妊娠したかも?」と気づくケースもあるでしょう。
・妊娠5週頃:妊娠検査薬を使用可能
妊娠5週頃では、市販の妊娠検査薬や病院で検査することができます。また、人によっては、この頃からつわりの症状が現れることがあります。
妊娠中には、体の中でさまざまなホルモンの変化が起こります。中でも、妊娠初期に大きく関わるのが、次の3つのホルモンです。
hCG(ヒト絨毛ゴナドトロピン)は、妊娠すると胎盤(になる組織)から分泌されるホルモンです。受精卵が着床して間もない頃から増え始め、1週間程すると分泌量はかなり多くなり、8~10週で分泌量のピークに(これがつわりにも影響しています)。妊娠検査薬は、尿中に含まれるhCGに反応して、妊娠しているかどうかを判定します。
卵胞ホルモン(エストロゲン)は、いわば女性らしさを作るためのホルモンです。女性らしい丸みを帯びた、潤いのある体を作るとともに、妊娠に備えて子宮内膜を厚くしたり、精子の通過をサポートしたりする働きがあります。
黄体ホルモン(プロゲステロン)は、子宮内膜を厚くするなど、受精卵の着床をサポートしてくれるホルモンです。受精卵が着床すると、子宮内膜のコンディションを保ち、妊娠の継続を助ける働きを担います。また、「基礎体温を上げる」「食欲を増やす」「乳腺を発達させる」といった働きもあります。
生理予定日に生理が始まらないなど、「妊娠しているかも?」と思ったら、まずは市販の妊娠検査薬で検査をしてみましょう。多くの妊娠検査薬は、生理予定日の1週間後から使用できます。検査をするタイミングが早すぎると、hCGの分泌量が少なく、正しく判定できない可能性があります。妊娠検査薬の取扱説明書などを確認し、推奨される検査時期を守ることがポイントです。
そして、妊娠検査薬で陽性の判定が出たら、それから1~2週間以内を目安に、必ず産婦人科を受診してください。妊娠検査薬で陽性が出ても、必ずしも正常な妊娠とは限らない(子宮外妊娠などの可能性もある)ため、産婦人科できちんと確認してもらわなくてはなりません。
とはいえ、妊娠検査薬で検査後、すぐに産婦人科を訪れても、まだ胎嚢(たいのう:赤ちゃんを包む袋のこと)さえ確認できず、再度受診が必要になる可能性もあります。「陽性が出たらすぐに産婦人科に行かなくては」と焦ってしまう方もいるかもしれませんが、受診の時期は、妊娠検査薬で陽性が出てから1週間後(生理予定日から2週間後)くらいでも十分です。
妊娠初期には、さまざま症状が現れることがあります。ただし、以下で挙げたような症状が現れたからといって必ずしも妊娠しているとは限りませんし、反対に、妊娠していれば必ず何らかの自覚症状が出るというわけでもありません。どの症状が出るかも個人差がありますし、人によってはまったく自覚症状がないケースもあります。
自覚症状だけで判断するのではなく、「もしかして妊娠かも?」と思ったら、まずは妊娠検査薬で確認することが大切です。
妊娠すると、「おりものの量が増える」「いつもとおりものの性質が違う」といった変化を実感したりすることがあります。また、おりもののにおいや色がいつもと違うと感じることもあります。
問題のない変化のことが多いですが、気になる場合はかかりつけの産婦人科で相談してみましょう。
受精卵が子宮内膜に着床する際に、「着床出血」と呼ばれる少量の出血が起こることがあります。生理予定日前後に起こるため生理とまぎらわしく感じるかもしれませんが、出血量はわずかで、1~3日程度で止まることがほとんどです。出血が少量なら様子を見ていて問題ありませんが、心配な場合は産婦人科を受診しましょう。また、「出血が続く」「出血量が増える」といった場合も受診してください。
妊娠すると、ホルモンの影響で体温が上がり、37℃前後の微熱が続くことがあります。また、人によっては、体のほてりや熱っぽさを感じることもあります。
妊娠すると、ホルモンの影響で腸が動きにくくなり、便秘になるケースもあります。以前は快便だった方が便秘になったり、元々便秘ぎみだった方が悪化してしまったりすることもあります。つらい場合は、かかりつけの産婦人科で相談してみてください。
妊娠すると、ホルモンの影響で、強い眠気を感じることがあります。「しっかりと睡眠をとっているはずなのに眠い」と感じるケースも少なくありません。強い眠気を感じたときは無理をせず、できるだけ体を休ませるようにするといいでしょう。
腰痛はおなかが大きくなり始める妊娠中期以降に感じやすい症状といわれますが、中には、妊娠初期に腰痛や腰の違和感がある方もいます。基本的には様子を見ていて問題ありません。
人によっては、軽い下腹部痛があったり、おなかが張ったように感じたりすることもあります。症状が軽ければ様子を見ていて問題ありません。心配なときや痛みが強いときは、産婦人科を受診しましょう。
妊娠初期に胸の張りを感じるケースもあります。生理前にも人によっては見られる症状なので、区別がつきにくいかもしれません。ホルモンの影響によるものなので、様子を見ていて心配ありません。
妊娠すると、「胃がムカムカする」「キリキリ痛む」「吐き気がする」といった症状を感じる方もいます。そのまま本格的なつわりに突入するケースも少なくありません。つわりには個人差がありますが、ピークは妊娠8~11週頃で、16週頃までには落ち着いてくることが多いといわれています。
妊娠すると体に水分を溜め込みやすくなり、手や脚などにむくみを感じることがあります。むくみの症状はおなかが大きくなる妊娠中期以降に出やすいものの、中には妊娠初期にむくみを感じる方もいます。
ホルモンバランスの変化や、つわりなどの体の変化などによって、個人差はありますが、気持ちが不安定になることもあります。わけもなく悲しくなったりイライラしたりして、感情のコントロールが難しくなるケースも少なくありません。メンタル的につらいと感じたときには一人で抱え込まず、パートナーをはじめ周りの人に相談したり、自治体の相談窓口を頼ったりするようにしましょう。
眠気と同様に、体のだるさを感じることもあります。また、人によっては「なんとなくだるい」「何もやる気が起きない」といった状態になることもあります。だるさを感じたときも、できるだけ体調優先で生活することが大切です。
妊娠すると、食欲が旺盛になったり、減退したりすることがあります。また、前述したような胃のむかつきや吐き気などのために、思うように食事がとれないこともあるでしょう。この時期は無理をせず、食べられる物を食べるようすれば大丈夫です。
妊娠初期では、人によっては頭痛が起きやすくなります。妊娠中に使える鎮痛剤もあるので、つらい場合は医師に相談しましょう。
妊娠すると、いろいろなにおいに敏感になることがあります。例えば、芳香剤や香水、柔軟剤、アロマ、ご飯の炊けるにおい、揚げ物、コーヒーなど、それまでなんとも思っていなかったにおいや好きだったにおいが、突然苦手になることも少なくありません。気になるにおいの物は身近に置かないようにするなどの工夫をするといいでしょう。
妊娠すると、それまで普通に食べることができていた食べ物を受け付けなくなる、嫌いだった食べ物を無性に食べたくなるなど、味覚が変化することがあります。また、好きだった食べ物が食べられなくなったり、特定の物ばかり食べたくなったりすることもあります。
妊娠初期は、食べられる物を食べられるだけ食べても問題ありません。「栄養バランスが偏ってしまうのでは?」などと思う方もいるかもしれませんが、妊娠初期に思ったように食べられなくても、おなかの赤ちゃんは問題なく育つので大丈夫です。
妊娠中は肌が敏感になり、かゆみや乾燥といった肌トラブルが起こることも珍しくありません。保湿が予防につながるので、自分に合ったローションやクリームなどを使ってケアするといいでしょう。かゆみがひどいときには、かかりつけの産婦人科医に相談してください。
妊娠初期には、人によってはめまいや立ちくらみが起こることも。そうしたときには無理をせず、体を休ませるようにしましょう。急に立ち上がったり起き上がったりしたときなどに、立ちくらみを起こすこともありますので、そのような場合はすぐにしゃがんで、転倒を防ぐようにしてください。
想像妊娠とは、実際には妊娠していないのに妊娠初期と似た症状があるような気になり、「妊娠した」と思い込んでしまうことです。妊娠を強く希望している場合や、妊娠に対して不安や恐怖感がある場合など、妊娠を強く意識しているときに起こることがあります。
例えば、「妊娠したならきっとつわりがあるはず」という思い込みや、「妊娠したかもしれない」というストレスが、本当に気分の悪さを引き起こすこともあるのです。
妊娠を疑う一番の要因は生理の遅れですが、生理は排卵の遅れやストレスなど、妊娠以外の理由で遅れる可能性もあります。生理予定日を過ぎても生理が来ないときや、妊娠したかもと思い当たるときには、まずは妊娠検査薬で検査をしましょう。
妊娠初期に現れることがある症状は、生理前症状とも似ているものがあるので、「区別がつきにくい」と戸惑う方もいるかもしれません。もし基礎体温を測っているなら、生理予定日を過ぎても高温期を保っていることから妊娠に気づけるかもしれませんが(妊娠していなければ、生理前に基礎体温が上昇する高温期が続いた後、低温期へと移り変わります)、基礎体温を測っていないという方も多くいるはずです。
妊娠しているかどうかは、自覚症状だけで判断できるものではありません。症状の有無には個人差があるため、妊娠していてもご紹介したような症状がまったくない方もいます。生理予定日を過ぎても生理が始まらず、妊娠の可能性がある場合は、妊娠検査薬を使って確認するようにしましょう。
妊娠したときや妊娠が疑われるときに、「これをするべき」「これをしてはいけない」などと、必要以上に神経質になることはありません。ただし、日常生活において、最低限気をつけたいことはあります。次のようなポイントを知っておきましょう。
妊娠中の喫煙は、早産や低出生体重・胎児発育不全など、おなかの赤ちゃんに多大な悪影響を及ぼします。また、生殖能力低下や子宮外妊娠をはじめ、前置胎盤や常位胎盤早期剥離を引き起こす可能性も指摘されています。
たとえ妊婦本人が喫煙しなくても、周りの人がたばこを吸うと、受動喫煙によって胎児の発育などに悪影響が生じる場合も。妊娠を考えている場合は、妊活中からパートナーや同居家族と共に、喫煙は控えるようにしましょう。
葉酸は、野菜や柑橘類、レバーなどに多く含まれている、ビタミンB群の一種です。細胞増殖に必要なDNA合成に関与する栄養素で、特に胎児にとっては重要な成分です。
厚生労働省では、妊娠の可能性があるときや妊娠初期は、通常の食品に加えて1日0.4mgの葉酸の摂取が望ましいとしています。サプリメントやゼリーなどを取り入れて、積極的に葉酸をとるようにしましょう。
感染すると赤ちゃんにも影響を与えることがある「トキソプラズマ」は、生肉に含まれている可能性があります。妊娠中は、生ハムやユッケ、レアステーキなどを含めた生肉の摂取は避け、肉類を食べるときにはしっかりと加熱するようにしてください。
妊娠が疑われるときや妊娠中は、レントゲン検査に注意が必要です。もし、レントゲン検査の必要がある場合は、妊娠している、または妊娠の可能性があることを、必ず医師に伝えてください。
薬の中には、妊娠中に服用すると、おなかの赤ちゃんに何らかの影響を与えるものがあります。妊娠が疑われるときは、市販薬などを自己判断で飲むことは避け、必ず医師の指示を仰ぐようにしましょう。
反対に、持病などで継続的に薬を服用していて妊娠を希望している場合は、自己判断で服薬を中断せずかかりつけの医師に相談してください。なるべく妊活中からかかりつけの医師に相談しておくことをおすすめします。
手洗い・うがいやマスクの着用など、感染症対策に気を配りましょう。また、妊娠を希望する場合は妊活前に風疹の抗体があるかどうかを確認し、必要であればパートナーと共に予防接種を受けておくことが肝心です。
なお、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症の予防接種は、妊娠中でも受けることができます。
妊娠中にストレスや不安を感じたときは一人で我慢せず、周りに相談することが大切です。家族やかかりつけの産婦人科、自治体の相談窓口など、頼れる相談先はたくさんあります。ストレスを抱え込まず、何か心配なことがあったら周りに相談してください。
妊娠初期は、10~15%くらいの確率で「早期流産」の可能性があります。そのため、「周りにいつ妊娠を報告すればいいのだろう」「妊娠報告は妊娠中期に入ってからのほうがいい?」などと、悩む方もいるかもしれません。
妊娠したとき、どのタイミングで誰に伝えるかは、周囲との関係性や状況によって異なります。例えば、仕事をしていて、つわりなどで仕事を休まなければいけない可能性があるなら、早めに職場に報告しておく必要があるかもしれません。
一方、仕事をしていないのであれば、妊娠初期に友人や親戚にあえて伝えなくても問題はないでしょう。人それぞれ状況は違うので、パートナーと話し合った上で、ケースバイケースで検討することが大切です。
妊娠初期には人によって、さまざまな症状が現れることがあります。しかし、症状があるかどうかは個人差があり、いくつも自覚症状を感じる方もいれば、妊娠してもまったく初期症状が出ない方もいます。
一方で、中には妊娠を強く意識するあまり、妊娠していないのに妊娠初期に似た症状を感じるようなケースもあります。いずれにしても、自覚症状だけで妊娠しているかどうかを判断することはできません。生理予定日に生理が始まらない、気になる症状があるなど、「妊娠しているかも?」と思ったら、まずは市販の妊娠検査薬で確認してみてください。
妊娠初期症状の多くは、そのまま様子を見ていても心配のないもの。ただし、痛みや出血など、不安なことがあった場合は、我慢せずに産婦人科を受診することが大切です。
妊娠検査薬での陽性後、病院で赤ちゃんの胎嚢まで確認できたら、きっとこれから生まれてくる命に心が躍ることでしょう。まずは出産までの期間を無事に過ごせるよう、最低限の注意は心掛けながら、マタニティ生活を楽しんでくださいね。
監修
稲葉 可奈子 先生
産婦人科専門医・医学博士
京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得。双子を含む4児の母。産婦人科での診療のかたわら、病気の予防や性教育、女性のヘルスケアなど、生きていく上で必要な知識や正確な医療情報とリテラシー、育児情報などを、SNS・メディア・企業研修などを通して効果的に発信することに努めている。
産婦人科専門医・医学博士
京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得。双子を含む4児の母。産婦人科での診療のかたわら、病気の予防や性教育、女性のヘルスケアなど、生きていく上で必要な知識や正確な医療情報とリテラシー、育児情報などを、SNS・メディア・企業研修などを通して効果的に発信することに努めている。