妊娠・出産時期
2023/05/11
尿をかけるだけで妊娠反応の有無を判定できる妊娠検査薬。生理予定日に生理が始まらず、「もしかしたら妊娠したかも?」と思ったときは、産婦人科を受診する前に、まず妊娠検査薬でチェックしてみるという方が大半ではないでしょうか。とはいえ、特に初めて妊娠検査薬を使う場合、「いつから使えるのだろう」「どんなことに気をつければいいの?」など、疑問に思うことがあるかもしれません。
ここでは、妊娠検査薬を使用する適切なタイミングや、使用時の心得などについてご紹介します。
目次
妊娠検査薬とは、妊娠しているかどうかを判定するための試薬です。薬局やドラッグストアなどで購入でき、スティック型の試薬に尿をかけて、妊娠反応の有無を調べます。
なぜ尿から妊娠反応の有無がわかるかというと、妊娠すると、胎盤(になる組織)からhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)と呼ばれるホルモンが分泌され、血液や尿から検出されるようになるからです。
妊娠検査薬では、尿中に含まれるhCGに反応して、妊娠反応の陽性・陰性の判定を行います。市販されている妊娠検査薬は一般的に、尿中のhCGの量が50mIU/ml以上で陽性と判定されます。
多くの妊娠検査薬では、「生理予定日から1週間後から」の使用が推奨されています。この時期になると、hCGの分泌量が大きく増え、より正確な判定結果を得やすくなるからです。
ただし、推奨される使用時期は商品によって多少の違いがあるため、必ず取扱説明書などを確認することが大切です。推奨時期よりも早く検査すると、尿中のhCGの濃度が低く、妊娠しているのに陰性と判定されてしまう可能性があります。
なお、不妊治療をしている方で、医師から検査方法や検査時期について指示がある場合は、その指示に従ってください。
妊娠検査薬の使い方は、決して難しいものではありません。ただ、妊娠検査薬を使うときには、次のような点を意識するといいでしょう。
前述したように、妊娠検査薬の推奨使用時期は、基本的に「生理予定日の1週間後から」です。検査する時期が早すぎて、妊娠しているのに陰性判定となってしまっては、本末転倒です。
「少しでも早く妊娠しているか知りたい」「検査の推奨タイミングまで待てない」という方もいるかもしれませんが、フライングで検査しても正しい判定結果が得られず、結局もう一度検査をすることになりかねません。早く知りたい気持ちもあるかもしれませんが、しっかり反応が出るタイミングまで待ってから検査するようにしましょう。
もしフライングで検査をした場合、生理のタイミングやhCG濃度の上昇タイミングのずれなどによって、正しく判定できずに陰性という結果が出ることがあります。陰性だったからといって「妊娠していなかった」と性急に判断をせずに、再度正しい時期に検査をやり直すことが大切です。
また、たとえ適切なタイミングで検査をしたとしても、その後も生理が始まらない、腹痛や性器からの出血など気になる症状があるといった場合は、そのまま放置せずに産婦人科を受診するようにしましょう。
妊娠検査薬で陽性反応が出たとしても、必ずしも正常妊娠であるとは限りません。場合によっては、子宮の中ではない場所に受精卵が着床してしまう「子宮外妊娠」や、妊娠検査薬で陽性反応が出たにもかかわらず、子宮内に赤ちゃんを包む袋である胎嚢(たいのう)が確認できない「化学流産」の可能性もあります。
正常妊娠かどうかを自分で確認することはできないため、妊娠検査薬で陽性反応が出たら、必ず産婦人科を受診するようにしてください。いつ検査をしたかにもよりますが、陽性が出てから1週間以内(生理予定日からだいたい2週間以内)を目安に受診するといいでしょう。
なお、フライング検査で陽性反応が出ても、受診のタイミングが早すぎると胎嚢(たいのう:赤ちゃんを包む袋)が確認できず、再度病院にかからなければいけなくなる可能性もあります。
妊娠検査薬で陽性反応が出たり、妊娠の可能性があったりする方は、産婦人科を受診するまでの過ごし方にも気をつけましょう。もし、たばこを吸っていた場合は、すぐに喫煙をやめてください(パートナーなど同居家族が喫煙をしている場合も同様です)。また、生肉を食べない、レントゲンや服薬に注意する(必要がある場合は妊娠の可能性があることを医師に伝える)といった点にも気を配ることが大切です。
妊娠初期症状や過ごし方の注意などについて詳しくは以下のページもご覧ください。
妊娠初期はどんな症状が出る?経過や妊娠かも?と思ったときの注意
妊娠初期には、まだまだおなかは大きくなっていないのに、さまざま体調の変化や不調を感じ、特に初めての妊娠では戸惑うこともあるかもしれません。また、1回目の妊娠と2回目の妊娠で異なる症状を感じたり、症状の程度が違ったりすることもあります。
例えば、次のようなものが体表的な妊娠初期の症状ですので、妊娠の可能性がある方や、妊娠検査薬で陽性が確認できた方は、一通りチェックしておきましょう。まだ症状を感じていない方も、心の準備に役立つはずです。
<妊娠初期の代表的な症状>
・おりものが変化する
・少量の出血がある
・微熱が続く
・便秘になる
・強い眠気を感じる
・腰痛が起こる
・軽い下腹部痛がある
・胸の張りがある
・胃のむかつきや吐き気がある
・体にむくみが出る
・気持ちが不安定になる
・体のだるさを感じる
・食欲旺盛や食欲不振になる
・頭痛が起こる
・嗅覚が敏感になる
・味覚が変化する
・肌トラブルが起こりやすくなる
・めまいや立ちくらみが起こる
なお、妊娠中にいわゆるつわりなどの症状がなかったとしても、それはそれで心配しなくて大丈夫です。妊娠初期の不調に振り回されずに過ごせるなら、それに越したことはありません。
妊娠初期の代表的な症状の詳細について詳しくは以下のページもご覧ください。
妊娠初期の症状や経過は?妊娠の可能性があるときの注意点を解説
妊娠初期では、一定の確率で以下のようなケースに見舞われることもあります。もちろん、妊娠検査薬で陽性が確認できた後に正常に妊娠している場合も多いかもしれませんが、知識として化学流産や子宮外妊娠などのリスクも把握しておきましょう。
前述したように、妊娠検査薬で陽性反応が出たとしても、必ずしも正常妊娠であるとは限りません。場合によっては、妊娠検査薬で妊娠反応が陽性になったにもかかわらず、子宮の中に胎嚢が確認できないことがあります。これを、化学流産といいます。
化学流産は、妊娠のとても早い段階で起こる流産です。尿中のhCGに反応して妊娠検査薬で陽性の判定が出るものの、その後の超音波検査では胎嚢を確認することができません。出血量は通常の生理と同じくらいか、やや多め程度です。そのため、妊娠に気がついていない場合は通常の生理だと思い、化学流産にも気がつかないことが少なくありません。
子宮外妊娠とは「異所性妊娠(いしょせいにんしん)」ともいい、受精卵が子宮内膜以外の場所に着床してしまうことです。子宮外妊娠で最も多いのは卵管への着床で、そのほかにも卵巣や腹腔など、さまざまな場所に着床してしまう可能性があります。
受精卵は子宮以外の場所で育つことができないため、子宮外妊娠の場合は妊娠の継続はできません。また、子宮外妊娠に気づかずに放置していると、卵管が破裂するなどしておなかの中で大量出血を起こし、命に関わる危険性があります。 妊娠検査薬で陽性反応が出ただけでは、正常な妊娠か、子宮外妊娠かはわかりません。そのため、陽性反応が出た後には、必ず産婦人科を受診することが大切です。
妊娠初期には、約10~15%の確率で流産の可能性があります。早期流産は一定の確率で起こりうるものであって、母体の状況や妊娠中の行動に原因があるわけではありません。 前述した化学流産のように出血などがある場合もあれば、出血や腹痛などの症状がなく赤ちゃんが亡くなってしまう「稽留流産(けいりゅうりゅうざん:超音波検査で胎児の姿が確認できないか、一度は確認できた胎児の心拍が止まっている場合)」の場合もあります。
妊娠検査薬は、妊娠すると分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンに反応して、妊娠しているかどうかを判定します。市販されている妊娠検査薬の多くは、生理予定日の1週間後から使用することができ、それ以前に検査をしても正しい判定結果を得られない可能性があります。結果を早く知りたいと焦る気持ちもあるかもしれませんが、パッケージや取扱説明書に書かれている使用方法をよく読み、適切なタイミングで検査をするようにしましょう。
また、妊娠検査薬で陽性の結果が出ても、それが正常な妊娠であるかどうかは、医療機関で調べてもらわないとわかりません。妊娠検査薬で陽性が出たら、その後1週間以内くらいを目安に、必ず産婦人科を受診することが大切です。
そして、正常な妊娠が確認できたら、その後は生肉を食べない、喫煙を中止するなど最低限の妊娠中の注意を守りながら、赤ちゃんの誕生を待つことになります。妊娠検査薬でのチェックや胎嚢確認のための受診は、いわば愛しい赤ちゃんと対面するための最初のステップ。焦らず時を待って、妊娠検査薬を使ってみてくださいね。
監修
稲葉 可奈子 先生
産婦人科専門医・医学博士
京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得。双子を含む4児の母。産婦人科での診療のかたわら、病気の予防や性教育、女性のヘルスケアなど、生きていく上で必要な知識や正確な医療情報とリテラシー、育児情報などを、SNS・メディア・企業研修などを通して効果的に発信することに努めている。
産婦人科専門医・医学博士
京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得。双子を含む4児の母。産婦人科での診療のかたわら、病気の予防や性教育、女性のヘルスケアなど、生きていく上で必要な知識や正確な医療情報とリテラシー、育児情報などを、SNS・メディア・企業研修などを通して効果的に発信することに努めている。