安定期って本当にあるの?いつから?過ごし方や注意点をチェック

妊娠・出産時期

  • 安定期

2023/05/11

妊娠中の「安定期」という言葉を聞いたことがある方は多いはず。中には、安定期という言葉の持つイメージから、なんとなく「安定期に入ったら安心」と考えている方もいるかもしれません。しかし、一般的に安定期と呼ばれている時期でも、妊娠中は何があるかわからないもの。そもそも安定期とは、いつ頃のどのような時期を指すのでしょうか。

ここでは、安定期と呼ばれる時期はいつから始まるのかをはじめ、安定期の母体のことや赤ちゃんの状態、過ごし方のポイントなどをご紹介します。加えて、妊娠中に起こりうるマイナートラブルについても解説しますので、妊娠期を過ごすときの参考にしてください。

妊娠16週頃からの時期を指す安定期

安定期とは、一般的に妊娠5ヵ月頃、週数でいうと妊娠16週頃からの時期を指す言葉です。ただ、医学的には、安定期という用語も概念もありません。

妊娠5ヵ月くらいからの時期が通称・安定期と呼ばれるのは、流産のリスクが高かったり、一般的につわりのピークを迎えたりする妊娠初期を過ぎたことが影響しているようです。
安定期は、妊娠初期の不安定な体調やつわりの症状が落ち着いてくることが多く、「体の状態が安定した」と感じる方もいるかもしれません。とはいえ、「安定期に入ればもう安心」というわけではなく、妊娠中はどの時期でも、何が起こるかわからないものと心得えておく必要はあります。

安定期といわれる時期のママの体は?

妊娠5ヵ月頃になると、おなかの膨らみが目立ち始める一方で、洋服を着ていると、見た目にはまだあまりわからないということも多いはず。また、個人差などはありますが、安定期には次のような変化が現れることがあります。

つわりが落ち着く

人によっても異なりますが、安定期はつわりが落ち着いてくることが多いといわれています(もちろん、中には最初からつわりの症状がない方もいます)。胃や胸のむかつきや吐き気、嘔吐といった症状や、常に何かを口にしていないと気持ち悪くなってしまう食べつわりの症状なども、安定期になると治まってくることが多いようです。それまで、つわりで思うように食事がとれなかった方も、食欲が戻ってくるかもしれません。
ただし、人によってはつわりの症状が続くこともありますし、一度つわりが治まっても、しばらく経ってから再び症状が表れるケースもあります。

バストが大きくなったり、乳首から母乳が出たりすることも

妊娠すると、次第に乳腺が発達し始め、妊娠前に比べてバストのサイズが大きくなる方もいます。それまで使っていた下着がきついと感じるようになったら、バストサイズに合わせた下着などを用意するようにしましょう。

また、人によっては、乳首から母乳のようなものが分泌されることもあるので、その場合は布やコットンなどで拭き取って、清潔を保つようにしてください。
なお、これらの症状は産後に母乳を出すための準備ですから、心配する必要はありません(ご紹介した症状がなくても、心配の必要はありません)。

胎動を感じる

おなかの中の赤ちゃんの動きを、胎動といいます。胎動を感じ始める時期にも個人差がありますが、一般的には妊娠20週くらいまでには胎動がわかるようになることが多いといわれています。
ただし、胎動の感じ方も人それぞれですから、初めのうちは気づきにくいこともあるかもしれません。

安定期の赤ちゃんは、大人の手のひらに乗るくらいのサイズに

安定期の赤ちゃんは、しっかりと人の形になり、手足を動かせるようになっています。大きさは、大人の手のひらに乗るくらいのサイズだとイメージを。
妊婦健診のときの赤ちゃんの姿勢によっては、妊娠5ヵ月くらいからの時期になると性別がわかることもあります。

安定期の過ごし方のポイントを知っておこう

妊娠5ヵ月頃からは、基本的に普通どおり過ごして大丈夫です。ただし、安定期もつわりの症状が続くケースがあるため、体調は人それぞれです。
また、つわりが治まっていても、家事や仕事などをがんばりすぎず、体調優先で過ごすことを心掛けましょう。ここでは、歯科健診をはじめとする安定期にしておくといいこと、意識したいことをまとめました。

歯の治療や健診をする

妊娠中の歯のケアは、とても重要です。妊娠中は、ホルモンバランスの変化や、人によってはつわりで歯磨きがおろそかになるなどの理由で、歯肉が腫れやすくなったり、虫歯が進行しやすくなったりする可能性があります。

安定期のうちに、歯の治療や歯科健診を受けておきましょう。自治体によっては妊婦歯科健診を無料で受けられたり、健診費用の一部が助成されたりするケースもあります。

適度な運動をしてもいい

妊娠経過に問題がなければ、ウォーキングやストレッチなど適度な運動をしてもOKです(ただし、必ず通っている病院の許可を得てからにすることが大切です)。
なお、安定期に特に運動をしなかったからといって、何か問題があるわけではありません。運動をすることがリフレッシュになるならいいですが、負担になるようであれば無理はしないようにすることが大切。また、おなかが張るようなことがあれば一度運動を控え、かかりつけの病院を受診しましょう。

両親学級に参加する

病院によっては、安定期に両親学級を開催していることがあります。「母親(父親)教室」「プレママ・プレパパセミナー」など呼び方はさまざまで、自治体や病院が主催するものがあります。
立ち会い出産を希望する場合、両親学級の参加が必須となっている病院もありますので、事前に確認しておくことが大切です。両親学級では妊娠中の過ごし方や出産、子育てなどについての話を聞くことができ、不安があれば相談することも可能。また、産後から始まる赤ちゃんのお世話について、必要な知識を得ることもできるでしょう。 なお、ほかの妊婦さんと交流できるケースもあるので、参加することでいい気分転換になるかもしれません。

出産の準備をする

産後の育児サポートなどで不安なことがある場合は、安定期に相談しておくと安心です。自治体の窓口にどのようなサポートがあるか問い合わせてみたり、民間で運営されている家事代行サービスなどを調べたりしておくのがおすすめです。

また、産後に実家のサポートを受けたいと考えている場合は、早めに相談しておくと、いざというときに慌てずに済みます。
これらに加え、必要な荷物をそろえた入院セットの準備をはじめ、退院してすぐ必要になる可能性のあるチャイルドシートやベビーカー、赤ちゃんの退院後の衣類などをそろえておくといいでしょう。

入院準備について詳しくは以下のページもご覧ください。
出産に向けての入院準備を詳しく解説!必要なものや準備する時期は?

ストレスを適度に発散し、無理をしない

妊娠中は、ストレスや不安を感じることがあるかもしれません。ストレスや心配事は一人で抱え込まず、パートナーやかかりつけの産婦人科、自治体の相談窓口などに相談するようにすることが大切です。
体調面の不安はもちろんのこと、メンタル面の悩みなども、その後の赤ちゃんとの生活にまで響いてしまうこともありますから、抱え込まないようにしましょう。

性生活は体調に配慮して

妊娠経過や体調に問題がなければ、妊娠中の性交渉も問題ありませんが、無理のない体勢などお互いに配慮をしましょう。性生活も普段どおりで差し支えありません。ただし、妊娠中は免疫力が低下し、菌の侵入などによって炎症が起こりやすくなります。また、精液には子宮収縮を促したり、子宮頸部をやわらかくしたりする成分が含まれているため、コンドームをせずに腟内で射精をしてはいけません。性感染症を防ぐためにも、コンドームをつけましょう。

旅行は家族でよく話し合いを

妊娠中は、いつ何が起こるかわからないもの。安定期と呼ばれる時期であっても、トラブルが起こる可能性はゼロではありません。万が一、旅行先で何かあった場合、最終的には自己責任となってしまいますから、旅行などを検討するなら、家族とよく話し合った上で決めましょう。
また、もし旅行など遠出をする場合は、母子手帳や保険証を持っていくのをお忘れなく。

妊娠中に起こりうるマイナートラブルとは?

妊娠中は、次のようなマイナートラブルが起こることがあります。事前に知っておけば、必要に応じて休息をとったり、病院にかかったりといった対処ができるかもしれません。ひとつずつ確認していきましょう。

貧血

個人差はありますが、妊娠が進むと貧血が起こりやすくなる傾向があります。これは、妊娠中に血液量が増加し、血液の水分量が増える一方で、赤血球の増加が追いつかないことから、相対的に赤血球濃度が低くなるためです。
貧血によって動悸やめまい、頭痛などの症状が出ることもあるため、鉄分をとるなどの貧血対策を行いましょう(サプリで手軽に必要な栄養を補うこともできます)。妊婦健診では貧血の検査を適宜行うので、病院で貧血治療をすすめられることもあるかもしれません。

便秘や頻尿になりやすくなる

妊娠中は、ホルモンの影響や、大きくなった子宮の圧迫により、便秘になる方もいます。妊娠中に使える便秘薬もあるので、便秘がつらい場合は産婦人科で相談してください。また、膀胱が子宮に圧迫されて、頻尿に悩まされることもあります。
もし、排尿時に痛みや残尿感がある場合は、膀胱炎の可能性もあるため医師に相談しましょう。

腰痛

おなかが大きくなってくると、おなかを支えるために、つい腰を反ってしまいがちです。それによって、腰周りの筋肉などに負担がかかり、腰痛が起こることがあります。気づいたときになど、無意識に腰を反ってしまっていないか、背筋を伸ばして正しい姿勢をとれているか、見直してみるといいでしょう。骨盤ベルトの使用で多少改善することもあります。

動悸・息切れ

妊娠中は、赤ちゃんの成長に伴って子宮に多くの血液を送り出すため、心拍数が上がって動悸や息切れを感じることがあります。動悸・息切れを感じたときには体を休ませると同時に、普段から無理はしすぎず、ゆったりとした動作を心掛けるようにしましょう。

皮膚トラブル

妊娠中は肌が敏感になり、かゆみや乾燥といった肌トラブルが起こることも。人によっては、皮膚や頭皮にかゆみを感じたり、肌荒れが起こったりすることもあります。皮膚のかゆみや湿疹などが気になる場合は、かかりつけの産婦人科医に相談しましょう。

おなかの張り

おなかの張りを感じた場合には、まず休息をとるようにしましょう。体を動かしたことなどによる生理的な張りであれば、横になってしばらく休めば治まってくることが多いはずです。
ただし、痛みや出血を伴うおなかの張りや、休んでも治まらない場合は、我慢をせずに、すぐにかかりつけの産婦人科に連絡し、受診してください。

安定期に気をつけたい症状や病気とは?

妊娠5ヵ月頃になると、「流産のリスクがなくなった」と安心する方も、中にはいるかもしれません。もちろん、何事もなく出産を迎える方は多くいますが、妊娠期全体を通してトラブルの可能性はゼロではありません。一般的に安定期と呼ばれる時期であっても、次のような症状や病気に関して一定のリスクがあることは、知っておく必要があります。

切迫早産

切迫早産とは、本来生まれるべきタイミングよりも早い段階で赤ちゃんが生まれそうになる、早産の一歩手前の状態です。
「おなかの張りや痛みが頻繁に起こる」「出血がある」といった症状が見られる場合は、切迫早産の可能性があるためすぐに病院を受診しましょう。自宅安静または入院で適切な治療を受けることで、赤ちゃんをおなかの中にとどめられる可能性が高くなります。

なお、早産の期間は、妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産(正期産より前の出産)のことをいいます。

子宮頸管無力症

子宮頸管無力症(しきゅうけいかんむりょくしょう)とは、痛みや出血などの自覚症状がないまま、子宮口が開いてきてしまう状態のことです。流産や早産の原因になるため、状況によっては子宮口を縛る処置をすることもあります。

妊娠高血圧症候群

妊娠の影響で起こる高血圧症を、妊娠高血圧症候群といいます。重症化すると、けいれん発作や脳出血のほか、肝臓や腎臓の機能障害などを引き起こすことも。また、赤ちゃんの発育が悪くなったり、胎盤が子宮からはがれて赤ちゃんに酸素が届かなくなったりと、母子共に非常に危険な状態になるリスクもあります。
発症した場合、多くは安静や入院で治療が必要となります。

妊娠糖尿病

妊娠中に初めて糖代謝異常が発見された場合は、妊娠糖尿病という診断に。妊娠糖尿病は妊娠高血圧症候群の原因になることがあるほか、ママが高血糖であるとおなかの赤ちゃんも高血糖になるなど、さまざまな合併症などが起こる可能性があります。
発症すると、血糖値のコントロールのための食事療法や、赤ちゃんに影響を与えない範囲でのインスリン注射などが行われます。
妊娠前から元々糖尿病の方は、妊活を始める前に、糖尿病の主治医の先生に妊娠希望について相談しましょう。

前置胎盤

前置胎盤とは、胎盤が正常より低い位置にあり、子宮口の一部または全部を覆っている状態を指します。

前置胎盤の場合は経膣分娩が難しく、帝王切開になります。前置胎盤を治すことはできないものの、出血やおなかの張りなどの症状がなければ、日常生活を送りつつ、経過を見ていくことに。その後、病院によっては、一定のタイミングで出産に向けて待機入院となる場合もあります。

■前置胎盤と正常な胎盤

※全前置胎盤:子宮口をすべて覆った状態の前置胎盤

安定期でも無理はしすぎず、妊娠期間や赤ちゃんとの新生活の準備を楽しんで

妊娠5ヵ月頃(妊娠16週頃)からの時期は、一般的に安定期と呼ばれます。安定期といわれる時期になるとつわりがあった方でも症状が落ち着いてきて、思うようにご飯を食べられるようになったり、外出できるようになったりするため、言葉のイメージも相まって「もう安心」と考えることがあるかもしれません。

しかし、一般的に安定期といわれる時期でも、妊娠中にはさまざまなリスクがあるということは、心得ておく必要があります。基本的には普段どおり過ごして問題ないものの、気になることがあれば早めに病院に相談・受診するようにしましょう。

安定期以降は、いわゆる胎動を感じる機会も増えるはずです。また、チャイルドシートや赤ちゃんの衣類などを準備するにつれて、新生活の実感がわき、ワクワクする方も多いのではないでしょうか。

安定期であっても妊娠期全体を通してのリスクは把握しておくべきですが、無理のない範囲で家族や気の置けない友人との食事を楽しんだり、マタニティヨガなどを楽しんだりと、充実した妊娠生活をお過ごしください。

監修

稲葉 可奈子 先生

産婦人科専門医・医学博士

京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得。双子を含む4児の母。産婦人科での診療のかたわら、病気の予防や性教育、女性のヘルスケアなど、生きていく上で必要な知識や正確な医療情報とリテラシー、育児情報などを、SNS・メディア・企業研修などを通して効果的に発信することに努めている。

産婦人科専門医・医学博士

京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得。双子を含む4児の母。産婦人科での診療のかたわら、病気の予防や性教育、女性のヘルスケアなど、生きていく上で必要な知識や正確な医療情報とリテラシー、育児情報などを、SNS・メディア・企業研修などを通して効果的に発信することに努めている。

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