新生児
2024/09/05
生後2ヵ月の赤ちゃんは、一般的に体の筋肉や視力がさらに発達し、抱っこしていても「力がついた」「しっかりしてきた」と感じることが増えます。話しかけると反応してこっちを見たり、笑顔を見せたりする子もいるでしょう。コミュニケーションが成り立ち始めた感覚があり、寝不足で疲弊するママも、さまざまな発見に心躍る瞬間が増えてきます。
ここでは、生後2ヵ月の赤ちゃんの特徴やお世話のポイント、注意したいことなどについて、ママが自分自身を大切にする方法と併せて解説します。
目次
生後2ヵ月になると、赤ちゃんは皮下脂肪が増えてふっくらと、肉付きが良くなってきます。個人差はあるものの、寝ているときも抱っこしているときも、なんとなく安定感が増した感じがするかもしれません。
こわごわ赤ちゃんにさわっていた新米ママ・パパも、だいぶ安心してふれ合えるようになっているはずです。
この頃の赤ちゃんの身長・体重の目安は、下記のとおりです。
<生後2ヵ月の赤ちゃんのサイズの目安>
男の子:身長54.5~63.2cm/体重4.41~7.18kg
女の子:身長53.3~61.7cm/体重4.19~6.67kg
※厚生労働省「乳幼児身体発育調査」(2010年)
<杉原先生コメント>
「身長や体重は、赤ちゃんの成長に何らかの問題がないかを早期に知るための大切な手掛かりです。といっても、厚生労働省のデータは、全国の乳幼児から無作為に抽出した同年代の子供を調べ、その平均値を出したものであり、あくまでもひとつの参考に過ぎません。
我が子の成長は、いつも身近で見ているママやパパが一番よく知っているはずです。今はスマホで手軽にいろいろな情報にアクセスできる時代ですが、できるだけ目の前の子供と向き合う時間を大切にしてください」
子供の成長の状況を知るには、母子手帳にある乳児身体発育曲線の「パーセンタイル値」を参考にしましょう。
乳児身体発育曲線は、赤ちゃんの身長や体重をグラフ化し、発育状況を可視化するためのグラフです。
グラフ内にある2本の帯が乳幼児身体発育調査の標準値(パーセンタイル発育曲線)で、調査対象の赤ちゃん全体から、上位と下位の3%ずつを除いた、残りの94%の赤ちゃんの値を表しています。
なお、パーセンタイル値は全体を100としたときに、小さいほうから数えて何番目になるかを示した数値のこと。50パーセンタイルを平均値として、20パーセンタイルなら100人の小さいほうから20番目となります。
子供の成長具合を確認したいと思ったら、1ヵ月に一度など、定期的に身長や体重を測定・記入し、帯の傾きに沿って数値が増えていることを確認してみてください。
生後2ヵ月は自治体の検診がないので、自宅で赤ちゃんを抱っこして体重計にのり、自分の体重を引く方法で計測するか、保健所や赤ちゃん用品店などにある体重計を利用するのがおすすめです。
継続して計測していくと、少し帯からはみ出す子もいれば、始めにぐっと成長し、途中からのんびりと横ばいになる子もいます。スロースターターで、急に成長し始める子もいるかもしれません。どれもその子の個性であり、大まかに帯に沿っていれば問題はありません。
また、乳幼児はパーセンタイル値だけでなく、身長と体重のバランスを見て成長具合を評価するのが一般的です。一度の測定だけでは判断できないため、無理のない範囲で継続的に測って記録を続けることをおすすめします。
生後2ヵ月の赤ちゃんは、前述した身長や体重の変化を遂げるほか、次のような成長も見られます。ポイントを知っておきましょう。
生後2ヵ月の赤ちゃんの視力は、だいたい0.1以下です。とはいえ、生後1ヵ月の視力は0.01程度ですから、比較するとだいぶはっきりと周りの物が見えるようになります。顔を近づけて話しかければ、ママの顔をなんとなく把握することができるはずです。
また、赤、青、緑といったはっきりした色使いの物を好むようになり、動く物を追いかけて見る「追視(ついし)」の範囲も広がります。原色を使ったおもちゃや、動くおもちゃを選ぶと赤ちゃんへの刺激になるでしょう。
生後2ヵ月では、「ハンドリガード」といって自分の手をじっと見つめたり、口元に持っていってなめたりする動きが見られるようになります。指しゃぶりをし始める子もいるでしょう。
これは、腕や手を自由に動かせるようになった赤ちゃんが、初めて手の存在に気づいたからこそ起こる動きです。見えた手を自分のものとして認識してはいなくても、「何かがそこにある」ことに気づき、なめて存在を確かめているのです。
生後2ヵ月になると、首や手足、背中の筋肉が発達して、腹ばいの状態からぐっと頭を持ち上げようとする様子や、手足を大きく動かす様子が見られます。首は据わっていなくても安定感が増し、少しのあいだなら縦抱きをすることも可能に。
なお、手足を動かしているうちに、元いた場所から横や上下に動いてしまうことなどもあるため、生後1ヵ月までに比べると、寝かせる場所などに注意が必要です。
赤ちゃんが生後2ヵ月になると、ぼんやりと周囲の様子が見えるようになり、外部への興味も高まります。また、母音を伸ばして発音する「アー」「ウー」といった言葉が出るようになり、表情も豊かになってきます。
そして、生後すぐから見られた生理反応としての笑いではなく、みずからの意思で笑う「社会的な笑い」が見られるようになるのもこの頃から。赤ちゃんの反応を見ながら育児を楽しみましょう。
初めて赤ちゃんを迎えた新米ママやパパの中には、この頃の赤ちゃんにどんな言葉をかけたらいいかわからないと感じる方もいるかもしれませんが、「ママはここにいるよ」「ふっくらしてきてかわいいね」「ニコニコしてるね、うれしいんだね」などと話しかけてあげれば、赤ちゃんも両親の存在をいっそう感じることができるはずです。
体の筋肉が発達するように、2ヵ月頃は口の周りの筋肉も随分発達してきています。生後間もなくに比べると、母乳やミルクを上手に飲めるようになり、一度に飲む量も増えてきます。成長につれて、1回の授乳にかかる時間が短くなることも多いでしょう。
泣いては授乳の繰り返しだった生後間もなくや、1ヵ月の頃に比べると、「気づいたら3~4時間空いていた」などと、授乳間隔が空いてきたように感じるかもしれません。
また、夜になるとまとめて寝る時間が増えてきて、中には1~2回しか起きない子もいます(反対に、2ヵ月でも頻繁に起きる子もいるので、あくまで赤ちゃんによります)。ぐっすり寝ているようなら、わざわざ起こして授乳する必要はありません。起きたタイミングで授乳するようにして、ママも赤ちゃんの寝ているあいだにしっかり体を休めるようにします。
一方、ミルクの場合は、パッケージに記載されている月齢ごとの量を守ってください。1日の合計で700~1,000ml程が一般的です。
なお、生後2ヵ月は飲む量が増える一方で消化機能は発達途上のため、ミルクの吐き戻しが増えることがあります。発熱がある、ぐったりしているなど、病的な兆候がある場合を除いて、機嫌が良ければ問題はありません。
ただし、吐いた物が詰まらないよう、すぐ横向きや縦抱きにして様子を見るようにしてください。
赤ちゃんの便は、母乳かミルクかによって形状に違いがあります。母乳の場合、便はやわらかめで、回数も多め。1日に7~8回に及ぶこともあります。一方、ミルクの場合は形のある便で、回数は1日2~3回程のことが多いでしょう。
そして、健康な赤ちゃんの便の色は黄色、茶色、緑色をしています。緑色は便に混じって排出される色素のビリルビンが酸化した色で、特に心配する必要はありません。
心配すべきなのは、赤、茶、白の便です。血が混じっていたり、ウイルス性の病気だったりする可能性もあるため、早めにかかりつけ医に診てもらうことが重要です。
また、おむつを替えるときには、汚れが残らないようにきれいに拭き取ります。赤ちゃんの肌はデリケートでトラブルを起こしやすいので、おしり拭きでこするのは避けて、優しく拭き取ることを心掛けてください。おむつかぶれを起こさないために、小まめにおしりを洗って乾かしてあげることも有効です。
なお、おむつかぶれとよく似た症状の出る疾患に「カンジダ皮膚炎」があります。丁寧にケアしても肌荒れがなかなか治らない、おむつがあたっていない部分までかぶれているといった場合は、病院を受診することが大切です。
生後2ヵ月になると、予防接種もスタート。具体的には、生後2ヵ月では下記の予防接種を受けることができます。
<生後2ヵ月から受けられる予防接種の種類>
・B型肝炎ワクチン
・ロタリックス/ロタテック
・Hib(ヒブ)ワクチン
・小児用肺炎球菌ワクチン
生後6ヵ月頃になるとママからもらった免疫がなくなり、病気にかかりやすくなるともいわれているため、推奨されるタイミングが来たら、すみやかに接種を受けることが望ましいです。自治体からお知らせが来て初めて予防接種について考え始めるママも多いかもしれませんが、かかりつけ医にも相談しながら、接種スケジュールは早めに立てておくと安心です。
<杉原先生コメント>
「防げる病気を確実に防ぐために、予防接種はとても大切です。最近は接種スケジュールの管理をサポートしてくれる便利なアプリもありますから、上手に使ってベストなタイミングで接種しましょう。発育や成長のことで気になることがあれば、予防接種のタイミングで病院に相談してもいいですね」
お世話をしてくれる人の表情や声、光など、外からの刺激に興味津々の生後2ヵ月の赤ちゃん。赤ちゃんとの時間をより充実したものとするために、スキンシップとおしゃべりをたくさん楽しみましょう!
生後2ヵ月では、「アーアー」「ウーウー」といった赤ちゃん独特の声が増えてきて、なんとなく会話をしているような雰囲気を楽しめます。「今日はいい天気だね」「お昼寝してご機嫌だね」など、たくさん語りかけて、愛情を伝えましょう。
赤ちゃんの近くで手遊び歌などを歌ってあげるのも、いい刺激になります。
<杉原先生コメント>
「赤ちゃんが動く物や色のある物に興味を示し始めるこの時期、『DVDを見せておいて、さっと家事を済ませよう…』などと思うことがあるかもしれません。しかし、1日何時間もDVDを眺めていると、言語発達が遅れるという研究もあり、子供の発達を考えると2歳までは電子メディアはできるだけ遠ざけたほうが無難です。
赤ちゃんは、光と音よりも、ママのにおいや声を喜ぶもの。疲れたときは周りの手を借りて、できるだけ赤ちゃんとふれ合ってみてくださいね」
生後2ヵ月では、夜にまとめて眠る子も出てくる一方、まだまだ何度も起きる子もいます。その子のリズムを尊重しつつも、少しずつ昼夜のリズムを整えていくことが大切です。
朝起きたらカーテンを開けて日の光を浴び、午前中や夕方の気候のいい時間帯を選んで少しお散歩に出掛けると、昼と夜の区別がつきやすくなります。
皮膚が薄く敏感な赤ちゃんの肌は、小まめに保湿をしないと乾燥に傾いてしまいます。スキンケアの目標は、肌がカサカサしないようしっとりさせること。皮脂分泌が盛んな、鼻の頭の質感を目標にするといいでしょう。
ただし、保湿剤をつけることが良いかどうかは、その子の肌によって異なります。中には、ローションやクリームが合わず、かえって肌トラブルを起こす子もいるからです。
石鹸で洗うだけではかさつくようなら、ローションなどで足し算のスキンケアをしたほうがいいですし、お湯のみで流した状態で潤っているようなら、何もつけない引き算のスキンケアが合っているかもしれません。
いずれにしても、入浴のときに赤ちゃんの肌の状態を観察し、その子に合う方法を探すことが大切です。
赤ちゃんのきれいな肌にポツポツと湿疹ができると、心配になるもの。生後2~3週間から6ヵ月くらいの赤ちゃんの頭皮や顔、首にできる黄色いかさぶた状などの湿疹(乳児湿疹)は、多くの赤ちゃんに見られるものです。
特に治療をしなくても、0歳のあいだに、時間の経過とともに良くなっていくことも多いです。
また、お風呂に入ったときに石鹸できれいに洗えば、改善していくことも多いでしょう。こびりついた膿などがなかなか取れない場合は、ベビーオイルやワセリンを塗って、よくふやかしてから洗うと取れやすくなります。
ただ、かゆみがありそうなときや、治りが悪いとき、症状が重いとき、もしくは、不安を感じた場合は自己流で対処せず、病院に相談してみることをおすすめします。
赤ちゃんを連れて出掛けるとき、欠かせないのがベビーカーや抱っこひもです。注意したいのは、思わぬ落下によるケガ。
国民生活センターに寄せられた転落事故の報告によれば、抱っこひもを装着してかがんだときに横から赤ちゃんの体がすり抜けて落下したり、頭をぶつけたりする事故が多いようです。抱っこひもで赤ちゃんを抱えて前にかがむときは、体をしっかり支えてください。
同じ理由で、抱っこしての家事も避けたほうが無難です。特に危険物が多いキッチンには、できるだけ連れて行かないように心掛けます。
また、ベビーカーは、ハンドル部分に荷物を掛けることによってバランスを崩したり、シートベルトをしていないことで転落したりするケースが目立ちます。ハンドルには物をなるべく掛けないこと、シートベルトは必ず装着することを徹底しましょう。
そして、この時期の赤ちゃんは寝ていてもかなり活発に動くこともあるため、周りの物が顔に覆いかぶさると窒息の危険があります。例えば、ベッドの周りにふわふわした毛布やぬいぐるみなどは置かないようにすることが重要。うつ伏せ寝に気づいたら、仰向けに戻してあげることも欠かせません。
初めての出産なら、赤ちゃんが生後2ヵ月のとき、ママもまだ親になって2ヵ月です。上の子がすでにいる場合も、お世話する子供が1人増えれば、生活は大きく変わるはず。産前休業の期間は、出産予定日から6週間(42日)前、産後休業の期間は出産翌日から8週間(56日。医師の許可を得て6週間で復帰する方も)ですから、中には仕事に戻る方もいるかもしれませんが、この頃のママの体は完全には回復していません。そのため、妊娠前とは異なる心身の不調を感じることもあるでしょう。
ですから、周りをできるだけ頼って、なるべく無理をしないように心掛けることがスムーズな回復につながると心得てください。また、次のようなポイントを知っておくことも大切です。
授乳をしていると、おっぱいのトラブルに見舞われることもあります。胸の一部が固く張っている、熱っぽくなる、痛みがあるといった場合は、乳腺炎の可能性が高いです。母乳外来に出向いたり、自宅を訪問してくれる助産師を呼んだりして、早めにケアしてもらうことが大切です。
また、産後は尿漏れに悩む方が意外に多いもの。これには、腟や尿道を締めたり、ゆるめたりを繰り返す骨盤底筋トレーニングが有効です。恥ずかしさからつい隠したくなるかもしれませんが、産後のママの多くが悩むことなので、気に病みすぎることはありません。リラックスも兼ねて骨盤矯正に通うことも有効なので、自分に合った方法で徐々に改善を図っていくといいでしょう。
慣れない赤ちゃんのお世話に追われ、精神的に追い込まれてしまうママも中にはいます。周りに頼りづらい状況で赤ちゃんと2人きりの生活が続き、家の中に引きこもりがちになると、赤ちゃんにとってもママにとっても良くありません。
また、産後のママは睡眠不足や育児への不安で余裕がなくなる上、ホルモンバランスが乱れて感情をコントロールしにくくなります。
こうしたときは、最も身近といえるパートナーに、まずは助けを求めてみましょう。産後は忙しさから産前のようなスキンシップやコミュニケーションなどがとれず、夫婦の関係が冷えこんでしまう「産後クライシス」に悩む夫婦も出てきますが、この時期に夫婦で協力して力を合わせながら乗り越えていけば、絆を深めることにもつながるはずです。
ママ側も、助けてもらったときには「夫に気持ちを伝える」「感謝の言葉を口に出す」など、言動で表すことが大切です。
ただし、悩みすぎて眠れなくなったり、ご飯が食べられなくなったりしたような場合は、本格的なうつ状態になる前に、医療機関などに相談することが重要です。
産後2ヵ月経過すると、早くも生理が再開するママもいます。排卵していれば妊娠の可能性がありますから、次の出産までどれくらい期間を空けたいか、ママの回復具合や気持ちはどうかなど、産後のセックスについては夫婦間でよく話し合うといいでしょう。適切な時期までは、避妊をすることも大切です。
少しずつ赤ちゃんとの生活や、お世話に慣れてくる生後2ヵ月。ママ、パパにも余裕が生まれ始め、赤ちゃんから返ってくる反応を楽しめる時期かもしれません。話しかけたときに喃語(なんご:言語を獲得する前に発する音のこと)が返ってくると、会話ができる未来が近づいていることを感じるのではないでしょうか。
一方で、産後の体調不良や、メンタルの落ち込みから抜け出せないママも多いかもしれません。この頃のママは、まだまだ回復途中ですから、周りの力をたくさん借りて、無理しないことが肝心です。周りと比較しすぎず、自分と赤ちゃんのペースで一歩ずつ進んでいけば大丈夫です。
監修
杉原 桂 先生
医療法人社団縁風会 理事長
ユアクリニック秋葉原 院長
昭和大学病院 小児科、千葉県こども病院 新生児未熟児科、独立行政法人国立病院機構相模原病院 小児アレルギー科などで研鑽を積み、ユアクリニックお茶の水 院長を経て、2019年よりユアクリニック秋葉原 院長。診断・治療という手段を通じて、患者さんたちを幸せにするという想いで診療にあたっている。ほか、医療系大学での講義も。
医療法人社団縁風会 理事長
ユアクリニック秋葉原 院長
昭和大学病院 小児科、千葉県こども病院 新生児未熟児科、独立行政法人国立病院機構相模原病院 小児アレルギー科などで研鑽を積み、ユアクリニックお茶の水 院長を経て、2019年よりユアクリニック秋葉原 院長。診断・治療という手段を通じて、患者さんたちを幸せにするという想いで診療にあたっている。ほか、医療系大学での講義も。